« 2005年1月 | トップページ | 2005年3月 »

2005/02/28

壁画「仏と隊商の主」

トルファンの壁画に現代のユートピアを見た。ベゼクリク千仏洞第15号窟の壁画のひとつ、「仏と隊商(キャラバン)の主」。シルクロードを行きかうキャラバン隊が描かれた壁画は、仏に供え物を差し出す様々な瞳の色、肌の色、顔かたちの違う多くの民族が描かれている。
モンゴルの遊牧騎馬民族ウイグル族が移住して築いた西ウイグル王国。ウイグルの王はマニ教からトルファンでもっとも信者の多かった仏教に帰依し、国家の安寧を祈るため「誓願図」をかかせたという。多くの民族があたりまえに共存していたトルファンの、豊かなくらしぶりを彷彿とさせるというこの1枚の壁画に、なんともいえない思いが込みあげてくる。
世界各地の音楽家が集まったシルクロード・アンサンブルも、西洋と東洋の文化が混ざり合った音楽作りも、皆同じコンセプトを示しているのではないだろうか。
人種の違い、宗教の違いから人と人とがぶつかり合う現代の世の中。いくら戦争反対と叫んでみても、様々な人や民族、国の思惑・利害がからんでそう簡単には争いはなくならない。実際、この千仏洞の壁画も後からイスラム教徒による破壊という目にあっている。そして保護の名のもとの剥奪である。
色々な人種や民族、文化を持つ人々が、同じ地球に住む同じ人間であるということを意識し、それぞれの違いに優劣をつけて奪ったり排斥したり、無理やり自分たちの文化を受け入れさせて支配しようとしたりせず、お互いを尊重し合い、影響し合いながら平和に共存できる方法があるのではないか。
そんな現代のユートピアを、芸術文化の面から押し広げて実現できたらと考えずにはいられない。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005/02/22

幻の壁画「誓願図」

NHKスペシャル「新シルクロード」第二集「トルファン」(灼熱の大画廊)でデジタル復元された「ベゼクリク千仏洞」の壁画は実に見事でした。
トルファン郊外にあるベゼクリク千仏洞は、ウイグル仏教の聖地として多くの壁画が描かれていたということですが、14世紀末頃から偶像崇拝を嫌うイスラム教徒によって破壊がはじまり、さらに20世紀初めには列強国の探検隊によって壁画が剥ぎ取られ(!)、今ではわずかにその一部が見られるだけとなってしまったそうです。
無残にも剥ぎ取られ、傷ついた地肌を剥き出しにしている回廊の壁面は見るも痛ましく、やるせない気持ちにさせられました。はからずもアフガニスタンのバーミヤンの遺跡の破壊写真や、去年見た映画「トゥー・ブラザーズ」の中でアンコール・ワット等の遺跡の仏像その他貴重な文化遺産を盗掘し、オークションに出品しているシーンを苦々しく思い出しました。
世界中に散逸してしまった壁画を、番組では最新のデジタル技術を駆使して復元してみせます。
世界中をまわり、その行方を捜す作業は勿論のこと、失われてしまった部分を検証しながらの復元作業は並大抵の苦労ではなかったろうと想像できます。復元作業に取り組んだ日本の大学の研究チームの力と技術は素晴らしいと思いました。
去年、仙台市博物館で開催された「国宝 鑑真和上展」を見に行った時に、デジタル再現された唐招提寺の外観や内部がビデオで放映されていたのですが、見る者の視点で次々と襖を開けながら部屋から部屋へ移って行き、説明が加わってとてもわかりやすく、CG映像の可能性がこのような分野でも活用されているのかと目を開かされた感じがしたこともつけ加えておきたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2005年1月 | トップページ | 2005年3月 »